相談・解決事例

Q.労働関係書類はいつまで保管しておくべきでしょうか。  2024.10.10 

・従業員を雇用する際に作成した各種書類は、その従業員が退職したとしてもすぐに廃棄はできないと思いますが、どのくらいの期間、保管しておけばよいのでしょうか。

A.お尋ねの保管期間については、労働基準法第109条で、当面3年間と定められています。詳しくは、以下の書類に関して、カッコ内に示した日を起算日として3年間です。

  1. 労働者名簿(労働者の死亡、退職又は解雇の日~)
  2. 賃金台帳(最後の記入をした日~)
  3. 雇入れに関する書類(労働者の退職、解雇又は死亡の日~) →  例:雇入決定関係書類・契約書・労働条件通知書・履歴書・身元引受書等
  4. 解雇に関する書類(解雇の日~) →  例:解雇決定関係書類・予告手当又は退職手当の領収書等・解雇予告除外認定関係書類等  
  5. 災害補償に関する書類(災害補償が終わった日~) →  例:診断書・補償の支払・領収関係書類等
  6. 賃金に関する書類(その完結の日~) →  例:賃金決定関係書類・昇給(減給)関係書類等
  7. その他の労働関係に関する重要な書類(その完結の日~) →  例:出勤簿・タイムカード等の記録・労使協定書・各種許認可書・残業命令書・退職関係書類・休職・出向関係書類・事業内貯蓄金関係書類等

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Q.半日休業や1日のうち一部休業した場合、休業手当はどのように計算したらよいでしょうか。  2023.3.4

・本人都合や、天災事変のような不可抗力によるものではない、いわゆる「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合(たとえば、訪問介護事業所などで2軒目の利用者から急なキャンセルが入ってしまい、代替業務や別の訪問先を用意出来ず、半日休業や1日のうち一部休業した場合など)、その休業手当はどのように計算したらよいでしょうか。

A.このようなケースについて、労基法26条(休業手当)では、「使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」と定められており、1日の全部でも一部でも、この条文が適用されます。これはどういうことかというと、その日について平均賃金の100分の60に相当する金額を支払わなければならないのですから、「現実に就労した時間に対して支払われる賃金が平均賃金の100分の60に相当する金額に満たない場合には、その差額を支払わなければならない」(昭27.8.7 基収3445 通達)ということになります。

たとえば、平均賃金が10,000円/日の労働者が一部休業した場合を考えてみましょう。支払うべき休業手当はその60%の6,000円ですから、1日のうち実際に働いた分の賃金が5,000円なら差額は1,000円となり、使用者はその1,000円を支払う必要があります。一方、実際に働いた分の賃金が7,000円であった場合には、7,000円>6,000円となるため、使用者は休業手当を支払わなくてもよいことになるのです。

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Q.スメルハラスメント その2 ~香水、煙草、芳香剤、柔軟剤の「ニオイ」~   2024.2.15

A.例えば、こんな「ニオイ」が気になることはありませんか?

  • エレベーター内に残る強烈な香水の…
  • 喫煙所から戻った人の煙草の…
  • 空間芳香剤や衣類用柔軟剤の…

臭覚過敏や化学物質過敏症の方にとっては他の方には分からない辛さがあるでしょうし、反面、自分の体臭や口臭を自覚し治療中の方も存在します。そのような双方の立場を顧みず一方的に注意をしたり、神経質だと一笑に付したりしてしまうと、パワハラやセクハラになりかねません。事と次第では、人権侵害や名誉棄損など、大問題になってしまうケースもあり得るのです。

【結論】→被害を訴えている人だけでなく、その相手方も傷つけないよう、双方の言い分をよく聞くとともに頭ごなしに決めつけず、十分に配慮しながら落としどころを探り、解決を目指しましょう。

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Q.スメルハラスメント その1 「スメハラ」とは?   2024.2.8

A.臭いによって他人に不快感を与えるハラスメントを指します。ただ、臭いの問題は、本人には自覚がなく他の人に迷惑をかけていることに気付いていないケースがほとんどで、他のハラスメント以上に慎重な対応が求められます。

例えば、「社員Aさんの口臭(体臭)がきつくて、仕事に支障をきたしている。何とかしてほしい」という訴えを相談窓口で受けた場合を想定してみてください。香水やタバコの臭いなどならまだしも(きつい香水への苦情相談は、上記)、口臭や体臭となると非常にセンシティブな内容であり、その対応如何では、本人の人格権の否定につながったり、別のハラスメントになったりしてしまう可能性もあります。このようなデリケートな問題を円満に解決するために考えられることは…

  • 社内の消臭対策(空気清浄機や無香の消臭剤・制汗スプレーの設置、口臭防止ガムの常備など)
  • セクハラ・パワハラに関する研修だけでなく、スメハラに関する研修や広報等を実施する
  • 部署で席替えを行い、当該関係者の席を離すなどの物理的対応を行う
  • 本人が信頼する上司や同僚から、さりげなく伝えてもらう       …などです。

上記の方法が功を奏しない場合は、相談窓口で直接対応する必要がありますが、いずれにしても、個々の状況に合わせた適切な対応が必要です。

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Q.従業員が心身ともにリフレッシュできる福利厚生を教えてください    2024.1.22

.例えば…

  • 福利厚生倶楽部等と「法人契約」を結び、スポーツジムフィットネスクラブ保養所宿泊施設などの利用推奨を行う
  • ワーケーションブレジャーリフレッシュ休暇制度を設ける
  • 人間ドックメタボチェック食生活指導ストレッチ時間導入などのヘルスケアサービスをする      …など、自社で採用できる方策はいろいろとあります。

先日、弊社では「Barn Grass Plants」稗苗先生に出張を依頼し、ボディアロマドレナージュと顔筋小顔マッサージコースの施術をしていただきましたところ、「癒された」「リフトアップした」など、社員にも大好評でした。

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Q.「全国健康保険協会管掌健康保険及び厚生年金保険被保険者の資格及び報酬等の調査について」という表題の文書が、管轄の年金事務所から届きました   2023.11.30

.提示・提出を求められる賃金台帳や出勤簿またはタイムカード、労働者名簿など、パートやアルバイトも含めて全員分を用意するのは結構大変ですし、「何を調査されるのか」についても気になることと思います。調査内容は、主に、

  1. 社会保険の加入漏れはないか、正しく手続きされているか
  • 試用期間開始時からきちんと加入しているか
  • パート・アルバイトも漏れなく加入しているか
  1. 報酬は正しく届出がなされているか
  • 定期代等の一部の手当を除外して届出していないか
  • 固定的賃金の変更があったとき、随時改定の手続きを正しく行っているか
  • 賞与支払届の提出漏れはないか         …などです。

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Q.会議がマンネリ化していて活発な議論になりにくいのですが…?  2023.10.26

A.会社近くに広い公園や緑の多い歩道などがあれば、是非、「ウォーキングミーティング」をとり入れてみてください。ウォーキングミーティングは、文字通り歩きながら会話することで、以下のような効果があります。

【想像力・創造性の向上】 考えがまとまらなかったりアイデアに行き詰ったりしたとき、自然の中で歩きながら話すことにより発散的思考が展開され、自由な発想を引き出すのに特に効果的とされています。

【上下関係を感じにくく気軽に発言を引き出せる】 向かい合わせではなく同じ方向を向いて会話するので、社内での立場を超えて、よりフラットな一体感を生み出し、斬新なアイデアが出やすいとされています。

【運動不足の解消】 歩く機会が少なく、仕事中も座っている時間が長い方の運動不足が解消できます。健康リスクの低減も期待でき、まさに一石二鳥!です。

気持ちの良い季節、近くの公園や緑道などを、「ぶら散歩」してみませんか。

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Q.約5年半働いたのち育休取得→職場復帰時の年休は…?  2023.10.16

・産休前に有休を使い切っていた場合、育休が明けて職場に復帰した時の年休はどうなるのでしょうか。

A.たとえ産休前に有休をすべて使い切っていたとしても、育休からの復帰時には、ほとんどのケースで一定日数の年休が付与されます。以下の例で見てみましょう。

  • 2016年4月1日  入社
  • 2021年9月1日  産休・育休に入る
  • 2023年4月1日  職場復帰

2021年9月1日に産休入りする前に有休をすべて使い切っていたとしても、その後同年10月1日には18日(この時点で勤続5.5年になるため)、2022年10月1日には20日(勤続6.5年のため)の年休が付与されるので、2023年4月1日には、合計38日の年休を保有していることになります(※産休・育休中は出勤したものとみなされます)。

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Q.「雇入れ時教育」について教えてください   2023.09.21

・いわゆる「雇入れ時教育」は、業種や規模に関係なく、すべての会社に義務があるのですか。

A.業種や規模を問わず、すべての会社に義務があります。そして、パートやアルバイトも含む全従業員が対象です。

会社は、新たに従業員を雇入れたとき、または従業員の作業内容を変更した場合、業務に関する安全または衛生のための教育を行なわなければなりません(労働安全衛生法第59条)。これがいわゆる「雇入れ時教育」で、その内容は、労働安全衛生規則第35条第1項に、以下のように定められています。

  1. 機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること
  2. 安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること
  3. 作業手順に関すること
  4. 作業開始時の点検に関すること
  5. 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること
  6. 整理、整頓及び清潔の保持に関すること
  7. 事故時等における応急措置及び退避に関すること
  8. 前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項

ただし、以下の二種の事業場「以外」で働く労働者については、上の第1号から第4号までを省略することができます。

  1. 林業、鉱業、建設業、運送業及び清掃業
  2. 製造業(物の加工業を含む。)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゆう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゆう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業及び機械修理業 

雇入れ時教育に必要な時間数については、特別教育や職長等教育と異なり、特に制約はありません。いずれにしても、採用時には会社の規則やルール説明、個人情報の取扱いなど諸々の注意喚起を含めて説明することになるので、雇入れ時教育の内容もあわせて盛り込むと良いでしょう。

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Q.社員が疲れ気味で病気欠勤者も多く、会社全体に活気が無いように感じます    2023.09.13

・活気を出すためのアイデアがあれば教えてください。

A.健康経営」に取り組んでみませんか。健康経営とは、社員の健康が将来的に組織の活性化や生産性の向上につながるという認識のもと、健康づくりの取組みを投資として実践しようという経営スタイルのことです。簡単にいうと、「社員の健康=会社の健康」と位置付けることです。

身近なところでは…健康増進のため、健康診断や人間ドック、がん検診等の推奨や費用の会社負担、病気休暇や多目的・長期休暇制度の導入、テレワーク・時差出勤及び時短勤務、etc…色々と考えられます。弊社でも、上記に加え、健康的な食事がスタッフのパフォーマンスの向上にも直結すると期待して、「置き型健康社食」を契約・利用することにしました。冷蔵庫を開ければいつでもオフィスに新鮮サラダ。健康経営は、まさに働き方改革の具体的手段といえます。

弊社に設置している「置き型健康社食」

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Q.中小企業でも「ワーケーション」導入ができますか?   2023.08.28

・「ワーケーション」を導入すれば、柔軟な働き方ができ、様々な効果が期待できそうですが、中小企業でも導入できますか。

A.導入は可能です。多様な働き方の導入による業務パフォーマンス、エンゲージメント向上への期待、社員のウェルビーイングをより高める手段なとどして、近年「ワーケーション」(Work+Vacation)が注目されています。このワーケーションという概念は、仕事と休暇の組合せ(区別)を前提とするものですが、その点を理解しないまま、「休暇中でも社員に仕事をさせることができる」、「仕事と休暇・余暇の無制限な混在を招くのではないか」などの誤解や懸念をされる経営者も多いようです。ワーケーションを、「モバイル勤務」「サテライトオフィス勤務」の一形態と正しく捉え、そのうえで、年次有給休暇の運用、労働時間の把握方法、労働保険の適用範囲などのポイントごとに、専門家の助言を受けつつ、導入をお進めください。レイナアラがお手伝いします。

労働時間の柔軟性~イメージ(出典:経団連HP)

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Q.従業員同士の交流を活性化させるためには~「サンクスカード」制度をご存じですか   2023.08.23

・従業員同士の交流を活性化させ、モチベーション向上等をはかりたいのですが…。

A.社内コミュニケーションや従業員のモチベーション向上などにつながるツールの一つに、「サンクスカード」制度があります。これは、感謝の気持ちをカードに書いて従業員同士贈り合う制度のことです。

弊社では「福利厚生倶楽部」(リロクラブ)を利用して、スマートフォンからカードにメッセージとポイントを添えて感謝の気持ちを伝えあう「ポイント型サンクスカード」制度を導入していますが、ポイントをためて商品を購入したり提携施設を利用したりと、概ね好評のようです。

他にも多くのアプリやツールがありますので、福利厚生の一環として検討されてはいかがでしょうか。

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Q.仕事中にノンアルコールビールを飲む社員   2023.07.06

・「ノンアルコールビールだから大丈夫です」と言って、仕事中に飲んでいる社員がいるのですが…。

A.一般的に、就業規則には「ノンアルコール飲料の禁止」とまでは規定されていないと思いますが、その外観などから、飲酒を疑われることもあるでしょう。また、他の社員にも悪影響を及ぼし職場の秩序や風紀を乱す可能性もありますし、来客などに見られたら会社の信用失墜にもつながりかねません。このような場合は、規定にはなくても「就業規則違反」となる可能性があります。

 争いを避ける意味でも、「ノンアルコール飲料の禁止」を、就業規則に具体的に明記しておきたいものです。

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Q.始末書の提出を拒む社員   2023.1.10

・問題を起こした社員に始末書の提出を求めたところ、非を認めることになるとの理由で拒んでいます。会社としてどのように対応すべきでしょうか。

A.けっして、提出を強要してはいけません。
納得をしていない者に対して、無理矢理、始末書をとったところで本人は反省するどころか、余計に会社に不信感を募らせ、トラブルに発展するだけです。「始末書」という趣旨ではなく、問題事故の「顛末書」や「経緯報告書」といった形で提出を促すとよいでしょう。それでも従わない場合は、明らかに業務命令に違反するわけですから就業規則に則った懲戒処分を下すことが可能になります。

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Q.訪問介護事業所ホームヘルパーの移動時間について   2022.10.1 

・利用者のAさん宅から次の利用者Bさん宅間の移動時間については、実質的に介護の仕事は行っていないので、労働時間としては取り扱わないでいたところ、ヘルパーの一人から「おかしいのでは?」と指摘がありました。

A.移動時間とは、事業場・集合場所・利用者宅の相互間を移動する時間をいいます。この移動時間については、使用者が業務に従事するために必要な移動を命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合は労働時間とするべきです。よって、労働時間として扱い、賃金を支払うようアドバイスしました。

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Q.代休がたまる一方で困っています   2022.10.1 

・当社では、休日出勤した従業員には一律に代休を取らせているのですが、忙しくて代休を消化しきれない従業員が続出して困っています。

A.そもそも労基法には、「代休」を使って労働時間を調整させるという概念自体がありません。又、休日労働をさせた場合に「代休」を与えなければならないとする義務も規定も存在しません。しかし、労働者の体調を気遣い、「代休」を与えることは、労使慣行としては確かに残っています。

原則論ですが、休日労働に対しては「割増賃金」を支払い、「代休」を消化した段階で、支払った「割増賃金」から、割増分を除いた賃金(つまり100/100の賃金)を控除するのが本来の支給方法です(「代休」を認めながら「代休」を消化しない、させないというのは、不適切です)。過去分の未払い賃金は精算した上で、振替休日と有給休暇等を上手く活用するよう、提案しました。

結論→管理をしっかりしないと「代休がたまる一方」という結果に陥ることになってしまいます。

当事務所の書籍のご紹介

with&afterコロナ禍を生き抜く ~新しい企業の人事・労務管理

著者
川崎秀明、樋口治朗、平澤貞三、滝口修一、亀谷康弘
出版
清文社
発刊
2020/10/16
価格
2,420円(税込)
詳細はこちら

『社会保険加入ハンドブック』

著者
東京SR建設業労務管理研究会
出版
第一法規株式会社
発刊
2018/1/23
価格
2,200円(税込)
詳細はこちら

〒113-0033 東京都文京区本郷3-23-5 
ハイシティ本郷2F TEL03-3812-9581